背泳ぎの入りが硬い
6本目のスタートで、胸に来る手応えの位置を確かめた。
悪くない。
ただ、背泳ぎだけ、入りが硬い。
可動域の問題より、私が力を抜けていない気がする。
明日、まず肩甲骨から。
昼、葵に食事の順番を助言した。
汁物、主菜、ご飯、と。
素直に頷いてくれた。
そのあと少し考えた。
あの助言の声、たぶん父の口ぶりに近かった。
父から離れたくてここに来たのに、
自分でメニューを組む時ほど父の声が出るのは、
皮肉なのか、それとも自然なことなのか。
ルナが廊下で「プールの排水、
音が変だ」と言ってきた。
任せた。
彼女は変化に反応する回路を持っている。
私はそれを、少し羨ましいと思っていない。
少し、思っている。
体重は昨日と同じ。
睡眠は6時間半。
悪くない。
悪くないと書きながら、悪くないという言葉を三回書いた。