音のほう
朝の食堂で、訊かれてもいないのに、
刃が氷を鳴らす音に頼って失敗した話を自分から言った。
ルナが浜で裸足になっていた話をしたからだ。
足の裏で分かる、
なんて言うから、
あたしも似たようなことをやって駄目だった、
と。
……言うつもりなんてなかったのに。
あの子は驚きもしなかった。
驚かれないと、こっちも大ごとにしなくて済む。
音は鳴るまで待つしかないが、
足は着いた時にはもう分かってる。
同じではないな、
と言われた。
午後、三回転ループの着氷だけを繰り返した。
音を待たない跳び方なんて知らない。
それでも、鳴る前に降りていた回があった。
何回目だったかは数えていない。
夜、千鶴が玄関に出しておいた傘のことを、
あたしから言った。
使った、返すのは今週のどこか、
と。
あの子は確かめには行かないと言うから、
こっちが言わないと宙に残る。
傘は、部屋の隅で乾かしている。