研ぐ音
朝いちばん、リンクの端で刃を研いだ。
誰も来ない時間の氷は音がしない。
研いでいるあいだ、
シャッ、シャッ、
という音だけが残る。
指でエッジの当たりを見て、
まだ甘いところをもう一度。
道具のせいにできれば楽なのに、
研ぐと余計に分かってしまう。
午後、三回転ループを六本。
降りたのが四、落ちたのが二。
刃のせいではなかった。
そのあとスピンの軸を反復した。
回っている最中は、
自分がどこにいるのかが分からなくなる時間が一瞬だけある。
あそこだけは、まだ言葉にできない。
夕方に通り雨。
リンクからの帰りに使わせてもらった傘を、
夜、乾かしてから玄関に戻した。
柄のところがまだ少し湿っていた。
戻した、と言いに行きたくなって、
やめた。
明日は船の日。
鞄の封筒は、そのままにしてある。