見てないと言いに行った
朝、凜ちゃんに傘のことを言いに行った。
玄関は見ていないから、
いつ戻っててもいい、
と。
そうしたら、見てないと言いながら、
見てないことをわざわざ報告に来るのがそういうところだ、
と言われた。
そのとおりだった。
黙ります、と答えたら、
黙らなくていい、
言ってくれたほうが返しやすい、
と返ってきた。
極端に振れるのは、
あたしの癖らしい。
昼、ルナちゃんに今週の外れの届け先に指名された。
思ったとおりにならなかったことを、
ルナちゃんは外れと呼んで数えている。
受け取りますと答えるまでの短い間に、
断る理由を探していた。
渡す側でいるほうが、
たぶん慣れている。
夜、祖母の煮しめの手順を紙に写した。
最後まで写せたのに、
水の量のところだけ空いている。
祖母は量らずにやっていた。
量っていないものは、
教わっても持って帰れない。
明日の船に、あたしの荷物はない。