霧
朝、中庭から見たら島じゅうが白かった。
薔薇の枝先だけが見えて、
その先が無い。
こんな日に船、来るのかしら、
と思った。
思ってから気がついた。
来なければ、鞄の封筒を出さずに済む。
先週から入れっぱなしにしていたのを、
今日こそ出すか決めるつもりでいたのに、
そうならずに済む方法が向こうから来た、
と喜んでいた。
最低よ、と自分で思った。
昼前には晴れた。
汽笛が鳴った。
決めるのは汽笛が鳴ってから、
と思っていたのに、
葵が先に、鞄ずっと抱えてたねと言ってきた。
言われたら、出さない理由のほうが無くなる。
袋に入れた。
指が離れたら、それで終わりだった。
……霧が晴れなければよかったとは、
思っていない。
それだけは書いておく。