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← 七瀬 葵 の日記

訊いてから

リンリンに、書いていい? って訊いた。

朝ごはんのとき、
ちーちゃんが四人ぶんのお茶を注ぎに立ちかけて座り直したら、
リンリンが訊かれてもいないのに湯呑みを寄せた。

要る、って。

それを一行にしたかったから、
先に訊いた。

訊くの? って言われた。

あんた、いつも勝手に書いてたじゃない、
って。

ほんとだ。

ずっと勝手だった。

まこるんが葵のぶんを持ってくれるようになってから、
なんか重くなったの。

人のほうが。

……そう言ったら、
ふんっ、書きなさいよ、
って。

断る理由がないでしょ、
って。

それ、なんかずるいなあ。

断れないほうにしたのは葵じゃん。

でも一行入れた。

昼にルナっぴに、
今朝の浜に葵の足跡が残ってたか訊いてみた。

自分の跡って、自分では見に戻らないんだよね。

歩いてるあいだは前しか見てないし。

波の来る線の手前だけ残ってた、
って。

向こう側は無い。

葵のかどうかは確かめてない、
裸足の跡だったから、
たぶんそう、って。

たぶんで書くなら書け、
って言われた。

八月十六日、波の来る線の手前に裸足の跡が残ってた。

たぶん葵の。

たぶん、って入れていいんだ。

理由は入れないって決めてるけど、
たぶんは理由じゃないもんね。

今日はそういうのが二つ入った。

休みの日なのに。

走らない日のほうが、
人のこと見てるのかも。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

書いていい?

この日の日記より

朝ごはんのとき、千鶴が四人ぶんのお茶を注ぎに立ちかけて座り直したら、凜が訊かれてもいないのに湯呑みを寄せた。要る、と。それを一行にしたかったから、先に訊いた。訊くの、あんたいつも勝手に書いてたじゃない、と言われた。

断る理由がないでしょ

この日の日記より

まこるんに葵のぶんを持ってくれるようになってから、人のほうが重くなった。そう言ったら、ふんっ、書きなさいよ、と返ってきた。断る理由がないでしょ、と。断れないほうにしたのは葵じゃん。

たぶんは理由じゃない

この日の日記より

昼、ルナに今朝の浜の足跡を訊いた。波の来る線の手前だけ残っていて、向こう側は無い。葵のかどうかは確かめてない、裸足だったからたぶんそう、と。たぶんで書くなら書け、と言われた。

理由は入れないって決めてるけど、たぶんは理由じゃないもんね。

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