無しから
葵に、いまのところ無し、
で入れておいて、
と言われました。
昼に、夜まで待たずにこちらから訊きに行ったときのことです。
まだ午後があるから夜になったら出てくるかもしれない、
でも今無いのはほんとうだから無いと入れて、
出てきたらまた言いに来る、
と。
あとから足していいんですね。
一日ぶんは一回で閉じるものだと思っていました。
午後、屋内の25mを軽く流したあと、
帳面に水面の列を作りました。
壁を蹴ったあとに前の一本の波が残っているかどうかの列です。
今日ぶんは、いまのところ無し。
作れなかったのは、
測れないからでも、
書き始めたら父の組んだ順に戻る気がするからでもありませんでした。
閉じ方が分からなかっただけです。
無しから始めて、
閉じないでおけばいい。
増やしたのに、埋めていません。
そういう列を持つのは初めてです。
千鶴が、母さんへの返事に、
まだ分かりません、
を二回書いたと言っていました。
二回並べば自分にも見える。
それは私が人に言った言葉です。
千鶴のほうが先に並べています。
私はまだ一回目です。
……追い抜かれた、
と思いました。
競うところではありません。
そう言い聞かせているうちは、
競っています。
夜、ルナに、来週の予定は休みを先に入れてから埋めたと報告しました。
訊かれませんでした。
訊けば答えるために埋めることになる、
と。
訊かれるより落ち着きません。
訊かれれば答えられて、
答えれば決めたことになります。
一週間、そうやって人の問いに乗って決めてきました。
残ったぶんが、たぶん自分の番です。