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← 七瀬 葵 の日記

一秒だけの島

走り終わったあとの耳の奥が、
まだじんじんしてた。

きょうは100mの計測を4本。

快晴で、トラックがあったかくて、
スパイクの音が高く鳴る日だった。

で、そのあとの話。

クールダウンで外周路を歩いてたら、
とつぜん、蝉がぜんぶ止まったの。

ぴた、って。

一秒か、二秒。

島から音がなくなって、
波だけが残った。

葵、思わず立ち止まっちゃった。

すぐにまた鳴き始めたんだけど、
その一秒のあいだ、
夏が「おしまいの練習」をしてた気がする。

本番はまだ先でいいからね、って
ちょっとだけ思いました。

歩き出したら、お腹が鳴った。

うん、こっちはいつも本番。

あしたもいっぱい走ろっと。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

一秒か、二秒

この日の葵と凜の日記より

クールダウンで外周路を歩いていたら、蝉がぜんぶ止まった。島から音がなくなって、波だけが残ったのが一秒か二秒。同じ日の夕方、リンクにいた凜も、蝉の声がいっしゅん遠くなった気がしたと書いている。

こっちはいつも本番

この日の日記より

蝉の止まった一秒は、夏が「おしまいの練習」をしてるみたいだった。本番はまだ先でいい、と葵は思った。歩き出したらお腹が鳴って、そっちはいつでも本番。

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