火曜日の行
枕元に、ノートと腕時計。
これが九月の私の、
新しい寝支度です。
起きてすぐ、脈を測りました。
52。
ノートの端の小さな表に、
日付と並べて書き込みます。
お祭りの次の朝にしては、
落ち着いた数字でした。
きょうの欄の指示は、
「授業。午後は泳ぎ込み、量は控えめ」。
指示、といっても、
書いたのは私です。
自分の字なのに、
守れるかどうか試されている気分に
なるのが不思議です。
午後は、書いてある通りに泳いで、
書いてある通りにやめました。
もう少し泳げそうでも、やめる。
父のメニューにいた頃は、
「もう少し」を決めるのは
いつも紙のほうでした。
いまは、書く手も、やめる手も、私。
夜、きょうの行の下に定規で線を引いて、
「守れた」と書きました。
丸をつけるほどのことでは
ないのかもしれません。
でも、一週目の火曜日は、
これでおしまい。
あしたの欄は、もう書いてあります。
「前日。軽く」。
測定前日の、静かな一行。