声が枯れた
のどが痛い。
夜になっても、まだ少し
声がかすれてる。
昼の便で、ルナっぴが行っちゃった。
葵ね、桟橋でいちばん大きい声を出した。
「ルナっぴ、いってらっしゃーい!」
たぶん、島の反対側まで届いたと思う。
ルナっぴはデッキに立ってて、
こっちを見なかった。
でも、そういう人だから。
見なくても聞こえてるのは知ってるから、
もう一回、名前を呼んだ。
船が小さくなって、
点になって、
見えなくなった。
そのあと、なんにも言えなくなった。
お昼は五目ちらしだったのに、
おいしいって言うのを忘れてた。
午後は部屋にいた。
夕方まで、ずっと。
こんなに長いあいだ
食べもののことを考えなかったの、
たぶん人生で初めてだと思う。
夜、食堂に行ったら
お昼と同じ献立だった。
はまぐりのお吸い物の椀が、
四つ並んでた。
そこでやっと、お腹がすいた。
いっただきまぁ〜す、って
声に出したら、
かすれててみんなに笑われた。
あしたは、ちゃんと
おいしいって言えるようにする。