数えない寝息
図書塔の三階の窓から、
晴れた海が、遠くまで見えていました。
開校記念日で、授業はありません。
いつもの席で後期の予習を始めて、
しばらくしたころ、葵が来ました。
「おじゃましまーす……」
小声のつもりだったと思います。
葵は私の隣に座って、
私のノートを、じっと見ていました。
じっと、見ていて。
三分後には、寝ていました。
壁の時計で確かめたので、
三分というのは、たしかです。
腕を枕にして、
すう、すう、と、規則正しい寝息。
吸って、吐いて。
吐くほうが、吸うほうより、少し長い。
一回ぶんで、だいたい……。
そこまで数えかけたところで、
はっとしました。
これは、ルナのやり方です。
人の何かを、黙って計る。
この一週間、食卓で見ていただけなのに、
いつの間にか、うつっていたみたいです。
数えるのを、やめました。
それから、葵の肩を軽くたたきました。
「三分です」
葵は「ふぁっ⁉」と起きて、
「まこるんの見学、してた!」と言いました。
たしかに、三分は、していました。
十二時には、食堂の前にいました。
ほかの四人も、ほとんど同じ時間に来ました。
赤飯に照り焼き、茶碗蒸しになます、
すまし汁。
最後に、紅白まんじゅう。
箱の貼り紙は、凜が剥がしました。
自分から、名乗り出て。
夕食は、にゅうめんとおにぎりで、
お昼がごちそうだったぶん、ちょうどいい軽さでした。
あしたは、来週の週割りを作ります。