欄の外
補食表の下書きが、机の引き出しに入っています。
葵に渡したほうの、下書きです。
平日は、バナナを一本。
土曜だけ、おにぎりを一個、午後二時に。
葵の時刻は、全部そこに書いてあります。
私の時刻は、どこにも書いてありません。
十五時、中庭の縁台。
職員の方が急須からほうじ茶を注いで、
小皿に、栗の渋皮煮を配ってくださいました。
誰も、始めませんでした。
始める人がいないと、こうなるのだと、
湯呑みの湯気を見ながら思いました。
十五時を少し過ぎたころ、
静けさのまんなかで、音がしました。
私のお腹でした。
……っ。
葵が、ぱっとこちらを見て、
それから、いちばん大きな声で笑いました。
みんなが笑って、
職員の方も、口元を押さえていました。
それで、会が始まりました。
笑いがおさまったあとは、
また誰も話しませんでした。
二度目の静けさは、最初のものより長くて、
誰も、それを終わらせようとしませんでした。
私も、しませんでした。
閉会の言葉は、ありませんでした。
急須が空になって、
職員の方が立ち上がったところで、
それが、おしまいの合図になりました。
部屋に戻って、週割りの土曜の欄に、
終わった時刻だけを書き足しました。
「15:00 中庭」の、すぐ下の行に。
明日は、来週の週割りを作ります。