座っている側
座っているだけで、いいんでしょうか。
午後三時の中庭で、
ずっと、そう思っていました。
縁台に、わたしたち五人と、職員の方。
職員の方が、急須を持って、
ひとりずつ、ほうじ茶を注いでまわってくださいました。
わたしの湯呑みにも。
いつもは、わたしが注ぐほうです。
家でも、注ぐのは、だいたいわたしでした。
注いでもらうのを、
どんな顔で待っていればいいのか、分かりませんでした。
だれも何も言わない時間が、しばらく続いて、
それから、真琴ちゃんのお腹が、小さく鳴りました。
みんなで笑いました。
顔を見たら、真琴ちゃんの耳が赤くなっていました。
笑いのあとで、栗の渋皮煮をいただきました。
渋皮のところまで、ていねいに煮てありました。
途中で、職員の方の湯呑みが空いているのが見えて、
わたしは、急須に手を伸ばしかけました。
「座っていてください」
やさしく、そう言われました。
伸ばした手を戻して、
湯呑みを、両手で持ち直しました。
底に、指をそえて。
それから、最後まで、
わたしは、座っている側の席にいました。
急須が空になるまで。
手のひらに残った、ほうじ茶のぬくもり。