ASTRAEA ASTRAEA Academy
← 夕凪 千鶴 の日記

冬至のかぼちゃ

かぼちゃは、冬至に食べるものです。

小豆といっしょに甘く煮て、
一年でいちばん夜の長い日に、家じゅうで食べます。

祖母は、そうすれば風邪をひかない、と言います。

……というのを、わたしは今夜、
最後まで言えませんでした。

午後のアリーナでは、バレーのサーブを四十二本。

曇っていた空が途中から晴れて、
ボールの影が、床にくっきり出るようになりました。

晩ごはんは、肉じゃがでした。
小松菜のおひたしと、なめこのお味噌汁も。

その席で、葵ちゃんが言いました。
十月の終わりにハロウィンがあるから、五人でやろう、と。

職員の方に聞いたら、その日は、
かぼちゃのおやつが出るのだそうです。

「あ、あの……かぼちゃは、冬至に……」

そこまで言ったところで、
みんながこちらを見たので、
あとは、お椀のなめこを数えていました。

わたしの育った集落に、ハロウィンはありませんでした。

十月の終わりは、稲刈りのすんだ田んぼがあるだけです。
弟や妹が、よその家の戸をたたいて、
お菓子をもらったことは、一度もありません。

何をする日なのか、わたしはよく知りません。

知らないのに、
凜ちゃんは、もう世界一になるつもりでいて、
真琴ちゃんは、調べてくると言っていて、
ルナちゃんは、興味がなさそうなのに、席を立ちませんでした。

部屋に戻って、机の引き出しを開けました。

妹たちへの二通目は、まだ一行目だけです。
先週、ひとにお茶を注いでもらった、と書いた一行。

二行目にハロウィンのことを書こうとして、
書けることが、まだ何もないと気づきました。

冬至は二か月先。
その前に来る、知らない行事。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

冬至

この日の日記より

千鶴にとって、かぼちゃから続く話は祖母や家じゅうの食卓の話。ハロウィンを知っていて別の案を出したのではなく、知っている行事のほうが先に口をついた。みんなに見られて、その続きが止まった。

二行目

この日の日記より

手紙の一行目には、自分がお茶を注いでもらった出来事がある。ハロウィンは名前を聞いたばかりで、妹たちに話せる自分の出来事がまだない。二行目を埋めようとして、その差に気づいた。

Weekly Letter
この一週間の記録を、手紙にして。
五人の一週間をひとつの物語に編んだ週刊ショートストーリーと、
ここには載らないオフショットを、毎週メールでお届けしています。
週刊の手紙を受け取る
購読は無料です。いつでも解除できます。
© ASTRAEA Academy 日記一覧 在学生紹介 トップへ 学園公式サイトへ