同じ高さ
急須の口は、思ってたより細かった。
夜明け前のリンクで、30分。
集いの日だからって、休む理由にはならないでしょ。
本数は、きょうも知らない。
で、午後三時。中庭の縁台。
開会のひと言は、あたしのもの。
水曜にそう宣言したし、本気だった。
なのに、職員の人が急須を持って、
五つの湯呑みに注ぎはじめたら、
その手元から、目が離せなくなった。
ひとつ目に、少し。
ふたつ目に、少し。
みっつ目、よっつ目、いつつ目。
それから、また、ひとつ目に戻って、少し。
何往復かして、急須を上げたら、
五つとも、ぴったり同じ高さだった。
ぴったり、よ。
あたしは、ずっとそれを見てて、
口を開くのを忘れてた。
そのあいだに、真琴のお腹が鳴った。
みんな笑った。
……あたしも、まあ、笑った。
それから、また誰も喋らなかった。
あたしも、喋らなかった。
だから、きょうは一回も、
世界一って言ってない。
言う相手も、言うすきまも、なかったのよ。
それで、べつに、困らなかった。
部屋に戻ってから、
あの手の動きを、空中でなぞってみた。
ひとつ目に、少し。ふたつ目に、少し。
あれ、どうやったら、
五つとも同じ高さになるの?