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← 久遠寺 凜 の日記

五日目

シャッ、と、エッジが氷を削る音。

放課後のリンクには、
それと、あたしの息の音しかなかった。

本数を数えずに跳んで、五日目。

着氷のたびの「いち、に」は、もう出てこない。
着氷のあとの空いたとこにも、だいぶ慣れた。

で、上がる前に、気がついた。

きょう、何本中何本、って、言えない。

いつもなら、リンクを出るときには、
頭の中で答えが出てた。
よかった日も、だめだった日も。

きょうは、それが無い。

無いと、思ってたより、静かなのよ。

リンクの扉を閉めたら、
外の音のほうが、うるさく聞こえたくらい。

……べつに、困ってないけど。

帰り道で、葵につかまった。
腕を引っぱられて、中庭まで。

縁台が並んでた。
土曜は、ここに座ってお茶を飲む会なんだって。

五人で座った。
あたしは、もちろん真ん中。

誰も喋らなかったけど、
リンクの静かさとは、ちょっと種類が違った。

数字のない、五日目の氷。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

何本中何本

この日の日記より

本数を数えずに跳んで五日目、着氷のたびの「いち、に」はもう出てこなくて、空いたとこにもだいぶ慣れた。上がる前に気がついたのは、きょう何本中何本と言えないこと。いつもなら、よかった日もだめだった日もリンクを出るときには答えが出ていて、それが無いと、思ってたより静か。

種類が違った

この日の凜と葵の日記から

帰り道で葵に腕を引っぱられて中庭へ行くと、縁台が並んでいた。五人で座って、凜はもちろん真ん中、誰も喋らなかった。その静かさはリンクの静かさとはちょっと種類が違ったと凜は書いていて、葵も水曜の練習のしーんとはちがう感じだったと書いている。

同じ夜、真琴は土曜の席を決めないことにして、余白に描きかけた四角を消した。

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