一部屋一つ
こん、こん、こん。
千鶴が、ラウンジの戸を三回たたく音でした。
きょうは船の日なので、練習は軽めです。
屋内の25mで、16本。
朝の通り雨は、プールを出るころには上がっていました。
夕食は、さんまの塩焼き。
そのあと、ラウンジの戸口で、例の口上を一度だけ試しました。
結果を書きます。
千鶴は、名乗って、口上を述べて、最後の一語で噛みました。
葵は、お菓子は無いと答えました。
千鶴は葵の襟を直して、謝りました。
……いたずら、とは。
葵が、何も出さないほうが得だと言い出して、
収拾がつかなくなりかけたところで、
凜が、ひと息にまとめました。
私は、まとめる役のつもりで、そこに立っていたのですが。
部屋に戻って、週割りの裏に書きました。
決まったこと。
一、十月三十一日に、五人で寄宿舎の部屋を順に訪ねる。
二、戸口の口上は、千鶴が直した形を使う。
三、訪ねられる側は、戸口で渡すものを用意する。お菓子でなくてよい。中身は当日まで言わない。
図書塔の事典には載っていなかった「やり方」が、三行できました。
私が調べたのではなく、
試してみたら、できたものです。
その下に、線を引きました。
五人の名前を縦に。
横に、「渡すもの」と「仮装」の二列。
見出しは、「一部屋一つ」。
欄は、まだ十個とも空いています。
白い欄が十個並んだ、週割りの裏。