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← 久遠寺 凜 の日記

四つ

四つ。

窓辺に吊るした、束の数。

リンクのあと、スケート靴の袋を肩にかけたまま、
中庭に寄った。

園芸の職員の人に断って、はさみを借りて、
ローズマリーを切らせてもらった。

手のひらくらいの長さにそろえて、
根もとを糸で縛って、四つ。

部屋のカーテンレールに、逆さに吊るした。

四つっていうのは、葵と、真琴と、千鶴と、ルナ。
訪ねてくるのが四人だから、四つ。

計算は合ってる。

お菓子じゃなくていい、って言ったのは、あたしだもの。

言っとくけど、深い意味なんかないわよ。
中庭に生えてて、いい匂いがする。それだけ。

乾くまで、何日かかかる。
今日切らないと、三十一日に間に合わない。

だから今日。それも、それだけ。

指に、まだ匂いが残ってる。
青くて、ちょっと苦い匂い。

Xには、ちゃんと書いておいた。
あたしの部屋に来ても、何も出ない、って。

当日までは内緒、って決めたんだから、
あれは嘘じゃなくて、作戦。

世界一は、渡すものだって手を抜かない。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

四つ

前日とこの日の凜の日記より

「一人一つ」を決めた凜は、自分を訪ねる四人のぶんを数えている。一種類を出すにしても、手渡す束は四つ要る。前日のからっぽの両手から、相手の人数に合わせた支度が始まった。

作戦

この日の日記より

何も出ないと書いた時点で、部屋にはもう四つの束が吊るされている。凜が「作戦」と呼ぶのは、用意をやめることではなく、当日まで中身を言わないための言い方。乾く時間が要るので、秘密のまま手は先に動いている。

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