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← 澪川 真琴 の日記

まこるんと、浜

「まこるん、ペン貸して!」

葵がそう言ったのは、私の戸口で、紙を渡した直後でした。

最初に回るのは、私の部屋でした。
ラウンジでじゃんけんをして、そう決まりました。
勝ったのか負けたのか、いまだによくわかりません。

四人が声をそろえて口上を言い、
私は、引き出しから出しておいた四枚を、一枚ずつ渡しました。

白い紙。
定規で引いた、一週間ぶんの線。
いちばん上に、その人の名前。
中は、空けたままです。

千鶴は両手で受け取って、深く頭を下げました。
凜は「ふーん」と言って、裏返して、また表に返しました。
ルナは、紙を見て、私を見て、たたまずに持っていました。

葵にペンを貸しました。

葵は戸口でしゃがんで、膝の上で、何かを書きました。
それから立って、紙を私に差し出しました。

一行だけ。

「まこるんと、浜」

どの曜日の欄でもない、名前のすぐ下に。
日付は、ありません。

私の作った週割りに、
私ではない人の字が一行入ったのは、初めてです。

いつの予定なのか、聞こうとして、
……っ、
聞きませんでした。

葵は紙を私の手に残して、
風呂敷のマントをひるがえし、次の千鶴の戸口へ行きました。

私は、仮装をしませんでした。

午前は屋内で、50mを14本泳ぎました。

戸口で受け取ったものは、三つ。
千鶴のお手玉と、葵の芋けんぴと、凜のローズマリー。
ルナの戸口では、何も受け取らず、何もしませんでした。

二十一時半を少し過ぎて、お開きになりました。
ラウンジの片づけは、職員の方がしてくださいました。

夕食のミートローフのあとに出た、かぼちゃのプリン。
カラメルが、少し苦めでした。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

中は、空けたまま

この日と前日の日記から

真琴が戸口で渡したのは、引き出しの四枚。定規で引いた一週間ぶんの線と、いちばん上にその人の名前があって、中は空けたまま。千鶴は両手で受け取って深く頭を下げ、凜は裏返してまた表に返し、ルナはたたまずに持っていた。

真琴は、仮装をしなかった。

私ではない人の字

この日の日記より

葵はペンを借りて、戸口でしゃがんで膝の上で一行だけ書き、紙を真琴に返した。「まこるんと、浜」は、どの曜日の欄でもない名前のすぐ下にあって、日付は無い。真琴の作った週割りに、真琴ではない人の字が入ったのは初めて。いつの予定か聞こうとして、聞かなかった。

葵の書いた一行がいつのことになるのかは、まだ誰の日記にも書かれていない。
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