空欄
定規。
三十センチの、透明なものです。
小学生のころから、同じ長さのものを使っています。
きのう、四枚の紙に線を引いたのも、これでした。
きょう、Xには、定規の線なら得意です、という意味のことを書きました。
本当のことです。
得意なことを書いておけば、間違いはありません。
泳いだのは屋内、50mを16本。
夕食は鮭のホイル焼きでした。
食べながら、葵が「まこるんは、仮装なにするの?」と聞きました。
「えっと……まだ、決めていません」
と答えました。
決めていない、は正確ではありません。
考えていない、のほうが近い。
表の私の行には、「渡すもの」と並んで、「仮装」の欄もあります。
自分で作った欄です。
そこは、空いたままです。
あしたが当日です。
本土からは、もう何も来ません。
島の中で、今夜から探す時間はあります。
でも、探さないことにしました。
仮装をしないのも、一つの選び方だと思います。
選んだ、と言えるかどうかは、わかりませんが。
引き出しの中に、名前だけ書いた四枚。
机の上に、空欄のままの私の行。