いなかった
指の先まで、冷えてた。
測定の日の朝は、いつもそう。
起きたときから、手が冷たいの。
授業の前に、リンクに寄った。
職員が、梁を見上げてた。
「いませんね」って。
あたしも見上げた。
梁の端の、暗いとこ。奥のほうも。
いなかった。
きのうの午後、搬入口が開いてたあいだに出たのか、
そのあとなのか。
誰も見てないって。
……ふん。挨拶もなしってわけ。
昼前に通り雨が来て、すぐ上がった。
十四時、測定。
ショートの通しを2本。
三回転ループは、2本とも降りた。手もつかなかった。
提出用紙に、そう書いた。
二本目の、終わりのポーズのあと。
フェンスの上を見た。
何もいなかった。
見る理由なんか、もうないのに。
夜、葵に「チュンっぴは?」って聞かれた。
知らないわよ、いなかった、って答えた。
それ以上は、言わなかった。
言うことなんて、ないもの。
窓の外は、とっくに晴れてて、