半分の明かり
「鳥のためよ。あんたたちに見せるためじゃないわよ」
リンクの入口で、そう言ってやったの。
昼に葵が、見張る係やる!って言いに来て、
ルナは、何も言わずに後ろからついてきた。
放課後、船の荷物の搬入で、搬入口が開いた。
職員が、照明を半分落とした。
リンクが、半分だけ暗くなった。
開いた搬入口の向こうは、昼の光。白い四角。
今度は、ちゃんと外のほうが明るいわ。
葵は、最初、フェンスのすぐそばに立とうとした。
ルナが、そこに立つな、出口だ、って言って、
葵を客席に連れていった。自分も、その隣に座った。
あいつは、梁からすっと下りて、フェンスの上にとまった。
……出口のほうじゃなくて。
待った。
職員が荷物を運ぶ音だけがしてた。
待つのって、性に合わないのよ。
だから、40分の終わりに、ショートの通しを一本入れた。
半分の明かりで通すのは、初めて。
滑り出す前に、言った。
「見てなさいよ」
……誰に言ったのかは、知らないわ。
最後のポーズで止まったとき、
目が、勝手にフェンスの上に行った。
あいつは、まだそこにいた。
客席の二人も、動かなかった。
搬入口が閉まって、照明が戻った。
あいつは、まだリンクの中。
夕方、掲示板に、また紙が出てた。
来週の土曜、個人発表会。三分から五分。競技じゃなくてもいいって。
夜、みんながそろって「まだ」とか言うから、言ってやったわ。
世界一をやるわよ、って。
何をやるかは、言ってない。決めてもない。
でも、世界一なのは、もう決まってるんだから。