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← 夕凪 千鶴 の日記

自分のぶん

自分のために縫ったことは、一度もなかったと思います。

夜、部屋で、針と糸を出しました。

きのう量った小豆と、ハロウィンのときの手ぬぐいの端切れ。
端切れを四枚ずつ合わせて袋に縫い、小豆を入れて、口を閉じます。

ひとつめ。
いつもの癖で、縫いながら、誰の手に渡るかを考えかけました。
考えなくていいんだ、と気づいて、針が一度止まりました。

ふたつめ。
針を入れるたびに、手のほうが軽くなっていくようでした。

みっつめを閉じたところで、小豆の袋は空になりました。

ちょうど三つ。
机の上に並べると、ころんとして、少しずつ形がちがいます。

午後は、サーブを四十本。
曇り空で、アリーナの中は一日じゅう同じ明るさでした。

夕方、寮の廊下で、ルナちゃんとすれ違いました。
ルナちゃんは、何も言いませんでした。
わたしも、何も言えませんでした。
手ぬぐいのことは、どちらも。

晩ごはんは、オムライスでした。

三つのお手玉を発表会で使うかどうかは、決めていません。
そのつもりで縫ったのでも、ないんです。

あしたは、投げてみようと思います。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

自分のために縫った

この日と前日の日記より

前日量った小豆と、ハロウィンの手ぬぐいの端切れで、お手玉を縫った。ひとつめは、いつもの癖で誰の手に渡るか考えかけて、考えなくていいんだと気づいて針が一度止まった。みっつめを閉じたところで小豆の袋は空になり、ちょうど三つ。

自分のために縫ったことは一度もなかったと思う、と日記は書き出している。

廊下

この日の日記より

夕方、寮の廊下でルナとすれ違った。ルナは何も言わず、千鶴も何も言えなかった。手ぬぐいのことは、どちらも。

ルナの日記では、すれ違うとき夕凪の肩が少しだけ壁のほうへ寄り、オレは寄らなかった。

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