どこを見るか
どこを見るかなんて、決めなくていいのよ。
夕方のリンクで30分。
晴れた日の夕方は、高い窓からオレンジが入ってくる。
通しの終わりのポーズで止まって、顔を上げた。
いつもなら、目線の先は決めてある。
審査員のいるあたり。客席の、ずっと上のほう。
きょうは、決めないまま、上げてみた。
目は、どこにも止まらなかった。
フェンスにも、梁にも、客席にも。
リンクの真ん中に、あたしが一人。
それだけ。
……いいじゃない。
世界一は、どこを見てたって世界一よ。
部屋に戻ったら、机の上に、真琴の紙。
上の端に「凜」ってあるだけの。
一週間ぶん、何も書いてないまま。
書くことなんて、いくらでもあったのに。
侵入者のこととか。
……書かなかったのは、あたしが決めたからよ。
窓辺のお手玉が、ぶらんって揺れてる。
来週は、何が入ってくるのかしら?