一番氷
朝の八時。
整氷が終わったばかりのリンクには、
まだ誰の線もついてない。
この一番氷は、
あたしのために磨かれたと
思うことにしてるの。
きょうは測定の前の日。
跳ばないって、
きのうのうちに決めてあった。
だから、通しの曲かけ。
ジャンプのところは
入りの確認だけにして、
ステップとスピンと、
つなぎを丁寧になぞっていく。
跳ばないプログラムなんて
たいくつでしょ、って思った?
ぜんぜん。
音のどこに乗るか、
エッジがどの深さで曲がるか、
やることは山ほどあるのよ。
一時間すべって、ふり返ったら、
まっさらだった氷が
ぜんぶあたしの筆跡になってた。
悪くない眺めね。
あしたのメニューは、
ショートの通しを二本。
数字で語る日の前の、
静かな最終調整。