競泳雑誌の話
廊下で葵に、郵便何?
と聞かれた。
競泳雑誌、と答えた。
父の家では取れなかった、と続けそうになって、
途中で止めた。
開いたようで、まだ半分。
ここまでを認めるのが、たぶん今日の私。
背泳ぎの入りが少し柔らかくなった。
月火の疲労が抜けたのと、朝の千鶴のお茶と、
桟橋を歩いたのが混ざってる。
要素は複数、と認めるのが大人。
凛の郵便を代理受け取りに申し出た。
素直に、癪だけど頼む、と応じてくれた。
頼られた、と感じた瞬間、自分がまだ『役目』を欲しがっていることに気付いた。
父の下では役目だったものが、
ここでは自分から選ぶものに変わりつつある。
悪くない。
夕食の後、雑誌をベッドで開いた。
200m個人メドレーの世界記録、
今月は0.02秒更新。
0.02秒の意味を分かる人だけが読む欄。
私はその欄を、実家の食卓では読まれなかった。
ここでは読める。
それだけで、今日は十分。