動かない水面
午前七時。窓に細かい雨。
食堂の窓から外を見て、
四人が同じことを考えていました。
葵は外周路をどうするか。
千鶴はアリーナだから平気だと言いかけて、
体育館までの道が濡れると言い直しました。
凜はリンクの屋根の話をして、
ルナは何も言いませんでした。
私だけが、何も変わりません。
屋内の25mは、
雨でも風でも同じ水温です。
「真琴はいいよね、関係なくて」
葵が笑ってそう言いました。
悪気はまったくありません。
私も笑って、そうですね、と答えました。
午後、水に入る前に
少しだけ水面を見ていました。
波が立っていません。
天井の照明が、まっすぐ映っています。
きのうも同じでした。
明日も同じです。
条件が変わらないというのは、
言い訳ができないということでもあります。
外が荒れた日に、
きょうは仕方ないと言える人がいます。
私には、その日がありません。
得だと言われて、
そうですねと答えたときの自分が、
夕方まで少し残っていました。
……っ。
雨の日の、動かない水面。