一組もらった
「これ、余ってしまったのですけど……」
千鶴が物置の前で、
軍手を抱えて困った顔をしてた。
五組そろえたのに、
水曜に使ったのは四組だったんだって。
そりゃそうよ。
運ばれる側は運ばないんだから。
ルナの分が、まるまる余ったの。
「戻しておきますね」
千鶴がそう言うから、
あたしは言ってやった。
「一組、あたしがもらうわ」
理由は聞かれなかった。
千鶴はそういうところがいいのよね。
いま、部屋の机の上にある。
軍手なんて、スケートには使わない。
リンクの手袋は別にあるし、
そもそも軍手で氷に触ったら
すぐびしょびしょになる。
だから、使う予定はないの。
昼の便は、見送りに行った。
葵がうるさいくらい叫んでて、
あたしは腕を組んで見てた。
デッキのルナは、こっちを見なかった。
見なかったふりが上手なのよ、あれは。
夜は五目ちらし。
お昼と同じ献立だった。
お椀が並んでいるのを見て、
あたしは何も言わなかった。
言わないほうがいいときって、
あるでしょ。
机の上の軍手は、
ちゃんと洗って干してある。
いつ返すのかは、別に決めてない。
……ねえ、一週間って、
こんなに長かったっけ?