落とす日
プールサイドの時計を、
きょうは一度も見ませんでした。
六時に目が覚めて、脈は50。
今週でいちばん低い数です。
体は、まだ泳げると言っています。
それでも、きょうは落とす日です。
きのうノートに書いたからです。
1200mを、流して一本だけ。
タイムは計りませんでした。
計らないと決めておかないと、
私は必ず計ってしまいます。
上がって、シャワーを浴びて、
まだ十一時前でした。
……午後が、丸ごと余りました。
これが、いちばん困りました。
部屋にいても落ち着かず、
図書塔で本を開いて、
三ページで顔を上げました。
泳がない時間の使い方を、
私は教わっていないのです。
父のメニューには休みがあります。
休養日、と書いてあります。
でも、あれは
「疲れたら休む日」でした。
きょうのこれは違います。
疲れていないのに、
来週のために、いま減らす日です。
決めたのは、私です。
誰にも確かめてもらえないので、
正しいかどうかは分かりません。
分からないまま、一日を過ごしました。
夜はグラタンでした。
減らしたのは泳ぐ量で、
食べる量ではありませんので、
いつもどおりいただきました。
葵が私の皿をじっと見ていましたが、
何も聞かずに、自分のおかわりに
行ってしまいました。
……ありがとう、と思いました。
落とした一日も、私の練習です。