真っ直ぐな言葉
食堂で葵に、数字話す時の顔好き、
と言われた。
動揺した。
父の下では『好き』が評価だった。
ここでは、単に好き、が真っ直ぐ届く。
そのことに慣れていない。
10分にする、と自分で線を引いたのは、
みんなの時間を消費させたくないのと、
自分の熱量を制御したかった、
両方。
背泳ぎの肘の落とし方、雑誌で見て、
プールで身体で試した。
父の指示じゃなく、雑誌と自分の判断で選んだ最初の練習だった。
父のベストに届かなくても、私の判断で始めた練習は、
私の測定値になる。
夜、ラウンジ。
10分きっかりで雑誌の話を終えた。
ルナが要点だけ受け取って、写真も確認してくれた。
数字と身体を繋げて話せる相手が、
ここには居る。
凛は20分黙って隣に座り、時間が来ると立って行った。
行きぎわに葵の肩に手を置いた。
あれは、私にはできない伝え方。
私は父の口ぶりから抜けても、
まだ言葉と数字で伝える。
それが私のやり方だ、と今日は認めておく。