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← 七瀬 葵 の日記

いちばん最後の円盤

円盤って、
持つとひんやりしてる。

手のひらより少し大きくて、
ふちのところが、ちょっとだけ重い。

きょうは月次測定の日でした。

十四時から、十種ぜんぶ。

100mは12秒52。
記録会のときより、ちょっと遅かった。

幅跳びは5m44。

いい感じにぽんぽん進んでたら、
途中で通り雨が来たの。

走るのと跳ぶのは、なんとかなる。
でも、投げるサークルは
濡れるとつるつるで、危ないんだって。

だから、投擲だけ後回し。

乾くのを待って、
ほかの種目を先に済ませて、
砲丸を投げて、やりを投げて、

気がついたら、
円盤が、十種のいちばん最後になってた。

表の、白いままだった四角。

雨が、そこに順番を書いてくれたみたい。

サークルに入ったのは、
夕方の、晴れたあと。

トラックには、葵ひとり。

先週みたいに、見てる人はいない。

投げた。

26m90。

円盤が芝に落ちて、
ちょっと転がって止まった。

先週は、ここで拍手が聞こえたんだよね。

きょうは聞こえなかった。

だから、葵が一回だけ、手を叩いた。

ぱん、って、
トラックに一個だけ、音がした。

それから円盤を拾いに行った。

あしたは、ゆっくり走るだけにする。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

白いままだった四角

この日と前日の葵の日記から

順番を自分で組める測定で、円盤の四角だけが白いまま残っていた。途中の通り雨で、濡れるとつるつるになる投擲サークルが後回しになり、砲丸、やりのあと、円盤が十種のいちばん最後になった。葵はそれを、雨がそこに順番を書いてくれたみたい、と書いている。

一回だけ、手を叩いた

この日の日記より

夕方、晴れたあとのサークルで、トラックには葵ひとり。円盤は26m90、先週はここで拍手が聞こえたが、きょうは聞こえなかった。だから葵が自分で一回だけ手を叩いて、トラックに音が一個だけした。

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