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立たなかった席

「ルナっぴは? ハロウィン、なにしたい?」

夕食の席で、七瀬が聞いた。

「どうでもいい」

答えは、それで終わりだ。

午後は、15周。

オレはドリフトをやっている。
計時器は先週から壊れていて、表示板には何も出ない。
部品は、水曜の船で来る。

数字のない15周は、
タイヤの声と、ハンドルの重さで確かめる。

途中で雲が切れて、路面の色が変わった。
変わったあとの何周かのほうが、後ろがよく流れた。

夕食は、肉じゃがだった。

七瀬は、掲示板で見つけたという一行の話を、
食べ終わるまで続けた。
寄宿舎の部屋を回って、菓子をもらうらしい。

久遠寺は、仮装で世界一になると言った。
澪川は、調べると言った。
夕凪は、何か言いかけて、黙った。

オレには、もう言うことがなかった。

皿は空だった。
茶も、飲み終わっていた。

どうでもいい話なら、先に戻ればよかった。

戻らなかった。

七瀬が立つまで、座っていた。

なぜかは、書けない。

部品は、あさっての便だ。

あすは、表示のないまま16周。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

表示板

この日の日記より

表示板に何も出なくても、路面が変わったあとの流れ方は身体に届く。ここで書く「よく流れた」は、タイムで確かめた速さではない。タイヤの声とハンドルの重さで捉えた走りの違いだ。

どうでもいい

この日の日記より

言葉では話を終えたのに、食事が終わっても席には残った。皿も茶も空なので、まだ食べていたからでは片づかない。七瀬が立つまで座っていた事実だけが、返事のあとに残る。

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