消えた表示
右の首すじが、少し張っている。
15周。
ラインを越えるたびに、
表示板に目が行った。
何も映っていないのは、知っている。
それでも、一周目も、二周目も、
同じ場所で、同じように見た。
五周目くらいで、見ている自分に気がついた。
それでも、次の周も見た。
走り終えて、エンジンを切ってから、
今日の周回を、頭の中で順に辿った。
十周目は、見た。
十一周目も、たぶん見た。
十二周目から先は、
表示板を見た覚えが無い。
いつ見なくなったのかは、分からない。
ピットで、ノートに「15周」と書いた。
戻る途中、七瀬が呼びに来た。
中庭に、縁台が並んでいた。
五人で座った。誰も、何も言わなかった。
夕食は、米にきのこを混ぜて炊いたもの。
さわらの身が、皿の上で簡単にほぐれた。