えりのいたずら
首のうしろが、まだ、くすぐったい。
ちーちゃんの指が、葵の制服のえりを、
ちょい、って直したとこ。
それが、ちーちゃんのいたずらだった。
朝は、通り雨。
ラウンジの郵便の箱に、お母さんあての封筒を入れた。
便箋4枚ぶん、ちょっとふくらんでるやつ。
ぽとん、って落ちたら、もう取りだせない。
お昼には、船といっしょに海の向こう。
午後は晴れたから、トラックでハードルを跳んだ。
夜は、さんまの塩焼き!
けさの船で来たさんま。
大根おろしをのせて、うまっ!
食べおわってから、ラウンジのドアのとこで、
あの合言葉を、一回だけ、ためしてみた。
葵は、部屋のなかの人の役。
ちーちゃんが、廊下から来る役。
こん、こん、こん。
「ゆ、夕凪、千鶴、です……」
知ってるよ〜!
それから、あのていねいな合言葉。
さいごだけ「いただきましゅ」になった。
葵は、元気よく答えたよ。
「お菓子、ない!」
ちーちゃん、かたまっちゃった。
ずいぶん長いこと、かたまってた。
それから、そーっと手がのびてきて、
葵のえりを直して、
「ご、ごめんなしゃい……!」
えっ、それが、いたずら?
ルナっぴが壁のとこから「もっとやれ」って言って、
ちーちゃんが、ぴょんってはねた。
そこで、葵、気がついちゃったの。
「出さなかったら、ちーちゃんが、なにかしてくれるの?」
じゃあ、お菓子、ないほうがいいじゃん!
って言ったら、リンリンに、すっごい怒られた。
決まったこと。
ひとりひとつ、ドアのとこで、わたすものを考えとく。
お菓子じゃなくてもいい。
なかみは、当日までひみつ。
もらう日だと思ってたのに、
あげるものも、考えなきゃいけなくなった。
うーん。葵、なにをわたそう。
あしたは走幅跳。跳びながら、考える!