箱のまま
箱は、片手で持てる大きさだった。
朝の便で、計時器の部品が届いた。
先週は、本土で品切れだった分だ。
通り雨で、路面は濡れていた。
きょうは走らない。
箱は開けなかった。
車庫の棚に、そのまま置いた。
付け替えは、あしたやる。
部品が付けば、数字が戻る。
先週の月曜から、数字なしで走ってきた。
夜、ラウンジの戸口で、夕凪が例の口上を試した。
オレは壁にもたれて見ていた。
戸を三回叩いた。名乗った。
敬語に直した脅し文句を言って、終わりの一語で噛んだ。
七瀬が、菓子は無い、と答えた。
夕凪は固まった。
それから、七瀬の襟を直した。
謝った。
「Bene(よし)」
口から出ていた。
「もっとやれ」
夕凪の肩が跳ねた。
脅すと言って、襟を直す。
言ったことと、やったことが、逆だ。
面白い。
そのあと、久遠寺が三つ決めた。
部屋を回る。口上はあれを使う。
訪ねられる側は、戸口で何か渡す。
オレも、渡す側に入っているらしい。
渡すもの。
車庫にあるのは、工具と、タイヤと——