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← ルナ・御影・ヴィスコンティ の日記

テープ一枚

午後の車庫は、シャッターの下半分にだけ、日が入る。

木曜は、走らない日だ。

きのう届いた箱を、棚から下ろして開けた。

計時器の受信部を、付け替える。
ラインを越えた時刻を拾う部品で、先週の月曜に壊れた。

途中で、七瀬が来た。
空き箱が欲しい、と言う。

終わるまで待て、と言ったら、
隣にしゃがんで、工具を渡しはじめた。

頼んでいない。

ドライバー。六角。もう一度、ドライバー。
オレが手を出す前に、次のが出てくる。

順番は、一つも違わなかった。
この前も、そうだった。

七瀬は、機械のことは何も知らない。
オレの手だけを見ている。

配線をつないで、電源を入れた。

表示板が点いた。

「ついた!」と、七瀬が言った。

空き箱を渡した。
七瀬は、それを頭の上に載せて帰っていった。

一人になってから、
養生テープを、表示板の幅に切った。

貼った。

数字は、器械の中に残る。
見るかどうかは、オレが決める。

数字が戻ったからといって、
手のほうを黙らせるつもりはない。

緑のテープ一枚の下の、数字。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

養生テープ

この日の日記より

壊れていたあいだは、見たくても数字が出なかった。修理後は数字を残したまま、自分で表示を覆っている。テープの下に記録を持ちながら、先に手で感じる走りを続けられる形にした。

手だけ

この日の日記より

葵が合わせているのは機械の仕組みより、ルナの手の動き。次の工具が一度も違わなかったのは、この場面ではその見方が間に合っていたからだ。頼まれていない手伝いを、ルナは順番まで書き留めている。

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