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← 七瀬 葵 の日記

貸してあげる

葵の箱が、とられた。

とったのは、猫。

寄宿舎の裏口に、置きっぱなしにしてたの。
朝、円盤の練習に行くとき持って出て、そのまま。

午後に戻ってきたら、
箱のなかに、まるいのが入ってた。

南側のお店のとこにいる猫だ。
葵の箱で、ぐうぐう寝てる。

葵は片足しか入らなかったのに、
猫は、ぜんぶ入ってる。ぴったり。

となりを見たら、リンリンが立ってた。
「見てたわけじゃないからね!」だって。
葵、なんにも聞いてないのに。

それから、ルナっぴが来て、ちーちゃんが来て、
さいごに、まこるんも来た。

だれも、箱にさわれない。

だって、あんなに気持ちよさそうなんだもん。

「いいよ。貸してあげる」

って、葵、猫に言っちゃった。

言ってから、気がついた。
あれ、葵の仮装の材料だった。

ふりだしに、もどっちゃった。えへへ。

でもね。

「あげる」じゃなくて「貸してあげる」って、口から出たの。

箱は、猫が起きたら、葵のとこに帰ってくる。
でも、いまは猫の。

ハロウィンにわたすものも、
「あげる」じゃなくて、「貸す」でも、いいのかな。

午前は、円盤を10投。距離は測らない日。

円盤は、葵のにがてなやつ。
きょうも、あんまり遠くには行かなかったと思う。

夜ごはんは、ロールキャベツ!
バターライスといっしょに食べると、うまっ!

猫にも、ひとくち、貸してあげたかったな。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

貸してあげる

この日の日記より

箱は自分のもののまま、いま使う時間だけ猫に渡した。「あげる」と違って、猫が起きれば戻ってくるつもりでいる。戸口で渡すものも手元からずっと無くなる物でなくてよいのか、と考えが広がった。

ぴったり

この日の日記より

葵には片足しか入らなかった箱に、猫は身体ごと収まった。仮装に使うには困った大きさが、猫にはちょうどいい。材料を取られたまま触れないのは、その収まり方と眠り方を見ているからだ。

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