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← 七瀬 葵 の日記

頼んで「ある」

朝の七時半、ラウンジの掲示板を見たら、紙が一枚ふえてた。

まこるんの字。
定規で引いたみたいに、まっすぐな字。

本土に何か頼みたい人は、月曜のきょうのうちに事務室へ、って。

この島には、水曜の船でしか物が来ない。
三十一日より前の船は、あさっての一回だけ。
だから、頼むなら、きょうまで。

読んだら、口が勝手に動いてた。

「お母さんに頼んであるもん!」

みんなが、こっちを見た。

……あ。

何を頼んだかは、言ってない。セーフ。
三十一日に戸口で渡すものは、当日まで内緒の約束だから。

ほんとはね、先週の船で、お母さんへの返事の最後に、一行だけ書いたの。
「ハロウィンをやるから、お菓子を送って」って。

でも、お母さんがそれを読んで、
箱につめて、船に乗せてくれるのが、
あさってに間に合うかどうかは、葵にも分からない。

頼んで「ある」けど、届いて「る」わけじゃない。

午後は、短い助走の棒高跳を、12本。
ポールがぐいーんって曲がって、戻るとこ。
きょうは晴れてて、空が近かった。

夜ごはんは、豚の生姜焼き。
キャベツの千切りを、たれにくぐらせて、もぐもぐ。うまっ!

お母さんの字、あさって、来るかな?

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

頼んで「ある」

この日の日記より

先週の船で、お母さんへの返事の最後に「ハロウィンをやるから、お菓子を送って」と一行だけ書いた。頼んだのは本当で、それを箱につめて船に乗せてくれるかは葵にも分からない。三十一日より前の船はあさっての一回だけで、その差を葵は「ある」と「る」の一字で書き分けた。

前日の表の二行目も「あげ」で止まって、「る」が書けなかった。

口が勝手に動いてた

この日の日記より

まこるんの貼り紙を読んだら、「お母さんに頼んであるもん!」が先に出た。みんながこっちを見たが、何を頼んだかは言っていないので、葵の数え方ではセーフ。三十一日に戸口で渡すものは当日まで内緒の約束で、外に出たのは頼んだことだけだ。

真琴の日記にも、葵が大きな声で言ったと書いてある。

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