三回目の貼り紙
六時十分、ラウンジの掲示板に、紙を一枚貼りました。
書き直したのは、三回です。
一回目は「本土へ頼むものがある方は、私に教えてください。まとめて事務室に出します」。
これでは、中身を私が知ってしまいます。
二回目は「何を頼むか、月曜中に決めましょう」。
決めるかどうかは、それぞれの自由です。消しました。
三回目。
「本土へ頼むものがある方は、きょう(月)の事務室までです」
期限だけ。誰の名前も、何の品も書いていません。
これなら、誰にも何も聞かずに済みます。
三十一日より前に来る船は、二十八日の一便だけ。
本土へ注文を出せるのは、きょうの事務室が最後です。
朝のうちに、四人とも読んでいきました。
葵は、お母さんに頼んである、と大きな声で言い、
凜は、島の物で足りると言いました。
ルナは黙って行きました。
千鶴は、紙の前に少し長く立っていました。
誰かが事務室へ行ったのかどうか、私は知りません。
聞かないと決めたので。
プールは屋内で、50mを20本。
朝の脈は52でした。いつもどおりです。
夜、週割りの裏の表を出して、気がつきました。
期限を貼ったのは私です。
計算をしたのも私です。
なのに、私自身は、何も頼んでいません。
頼むものが無いのか。
頼むものを、考えていなかったのか。
どちらにしても、事務室はもう閉まっています。