ASTRAEA ASTRAEA Academy
← 七瀬 葵 の日記

ちょうちょ

風呂敷。紺に、白い波の柄。

夜、部屋の鏡の前で、首に結んでみた。

四すみのうち、二つをつまんで、
あごの下で、ちょうちょ結び。

結べた。

……あれ。

この結び目、見たことある。

弟が小さかったころ、
「マントやって!」って走ってきて、
葵がしゃがんで、あごの下できゅっと結んであげてた。

あのときと、おんなじ形。

お母さんの袋の結び方は、きのう、三回やってもできなかったのに。
こっちは、一回でできた。

手が覚えてたのかな。

鏡の中の葵、マントの裾が膝のうしろまである。
くるって回ったら、ふわってなった。えへへ。

いつも結ぶ係だったから、
葵の背中でふくらむの、はじめて見た。

三十一日、これで回ろうかな。

午後は走幅跳を10本。
曇りで、踏切板がちょっとしめってた。
でも、10本目がいちばん遠くまで行った気がする。測ってないけど。

夜ごはんは、鮭をホイルで包んで焼いたやつ。
包みを開けたら湯気がぶわって出て、前が見えなくなった。

弟、いまは、自分で結べるのかな。
結べなくても、もう、マントなんて——

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

ちょうちょ結び

この日と前日の日記から

夜、お母さんの箱を包んでいた風呂敷を、鏡の前で首に結んだ。四すみのうち二つをつまんであごの下でちょうちょ結びにしたら、弟が小さかったころ「マントやって!」と走ってきたときに結んであげていたのと、おんなじ形。きのう三回やってもできなかったお母さんの袋の結び方と違って、こっちは一回でできた。

結ぶ係

この日の日記より

マントの裾は膝のうしろまであって、くるって回ったらふわってなった。いつも結ぶ係だったから、自分の背中でふくらむのを葵ははじめて見た。三十一日はこれで回ろうかな、までで、決めたとは書いていない。

日記は、弟はいまは自分で結べるのかな、の先で切れている。

Weekly Letter
この一週間の記録を、手紙にして。
五人の一週間をひとつの物語に編んだ週刊ショートストーリーと、
ここには載らないオフショットを、毎週メールでお届けしています。
週刊の手紙を受け取る
購読は無料です。いつでも解除できます。
© ASTRAEA Academy 日記一覧 在学生紹介 トップへ 学園公式サイトへ