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← 七瀬 葵 の日記

鉛筆の二行目

かさっ。

机の上の、芋けんぴの袋の音。

4袋。お母さんの結び目のまま。

きょうは外周路を5周、ゆっくり。
晴れてて、走ってるうちに、だんだん雲が出てきた。
ゆっくり走ると、きのうのことばっかり思い出す。

まこるんの戸口で書いた、「まこるんと、浜」。
いつにするか、決めてない。
まこるん、困ってないかな。

夜、競技以外の「好き」を書く表をひろげた。

一行目、「食べる」。
二行目は、先週の「あげ」のまんま。

「あげ」の横に、鉛筆で書いた。

「わける」

ペンじゃなくて、鉛筆。
まだ、消せるほうがいい気がして。

あげる、とも、もらう、ともちがう。
お母さんが作って、葵がわけて、みんなが食べる。
ルナっぴのポケットにも、一つ。

それから、便箋を出した。
お母さんに、お礼の手紙。

……一行も、書けなかった。

「ありがとう」って書いたら、それで終わっちゃう気がして。
風呂敷のことも、芋けんぴのことも、
みんなの顔のことも、ぜんぶ書きたいのに、
どこから書けばいいのか、わかんない。

次の船は、水曜。

それまでに、書けるかな?

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

わける

この日と前日の日記から

競技以外の「好き」を書く表の二行目は、先週の「あげ」のまんまだった。その横に鉛筆で「わける」と書いた。あげる、とも、もらう、ともちがって、お母さんが作って、葵がわけて、みんなが食べる。ペンじゃなくて鉛筆なのは、まだ消せるほうがいい気がしたから。

前日、戸口で「葵は、わけるだけ!」と言ってから、あ、これだ、と思っていた。

一行も、書けなかった

この日の日記より

お母さんへのお礼の手紙は、便箋を出して一行も書けなかった。「ありがとう」と書いたらそれで終わっちゃう気がして、風呂敷も芋けんぴもみんなの顔もぜんぶ書きたいのに、どこから書けばいいのかわかんない。次の船は水曜。

「まこるんと、浜」も、いつにするかはまだ決めていない。

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