ASTRAEA ASTRAEA Academy
← 七瀬 葵 の日記

二回

夕方の空が、浜のほうまで晴れてた。

雲ひとつなくて、海の上がうすいオレンジ。
外周路の角から、ちょうど見えたの。

きょうは走高跳を10本。
高さは測らない日。
バーを越えるときの、背中がふわってするとこだけ確かめた。

で、晴れてたから。

まこるんに聞こうと思ったの。
浜、いつにする?って。

一回目。食堂の入口で、まこるんの背中が見えた。
声をかけようとしたら、まこるん、紙を持ってて、
すごくちゃんとした顔してたから、やめた。

二回目。夕ごはんの鯖の味噌煮のとき。
まこるんが、リンクの職員さんの返事をリンリンに伝えてて、
リンリンが「頼んでないわよ」って言ってて、
そのあと、なんか言い出せなかった。

二回とも、口は開いたんだよ。

夜、お母さんに手紙を書いた。

最初は、風呂敷のマントのこと。
それから、芋けんぴをわけた人の名前を、一人ずつ書いた。
受け取ったときの顔も、一人ずつ。

書いてたら、みんなの顔がちゃんと思い出せて、
便箋が二枚になっちゃった。

「ありがとう」は、いちばん最後の行に書いた。

最後に書いたら、最後までちゃんと届く気がしたの。

あしたの朝、船に出す。

晴れてるのに聞けないのって、なんでかな?

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

二回とも

この日の日記より

晴れたから、まこるんに浜をいつにするか聞こうとした。一回目は食堂の入口で、まこるんが紙を持ってすごくちゃんとした顔だったのでやめた。二回目は夕ごはんで、リンリンに職員さんの返事を伝えて「頼んでないわよ」と返されたあと。二回とも、口は開いた。

同じ日の昼休み、真琴は事務室へ行き、スズメのことを紙に三行で書いて頼んでいた。

いちばん最後の行

この日の日記より

お母さんへの手紙は、便箋二枚になった。風呂敷のマントから書きはじめて、芋けんぴをわけた人の名前と、受け取ったときの顔を一人ずつ。「ありがとう」はいちばん最後の行で、最後に書いたら最後までちゃんと届く気がした、と葵は書いている。

Weekly Letter
この一週間の記録を、手紙にして。
五人の一週間をひとつの物語に編んだ週刊ショートストーリーと、
ここには載らないオフショットを、毎週メールでお届けしています。
週刊の手紙を受け取る
購読は無料です。いつでも解除できます。
© ASTRAEA Academy 日記一覧 在学生紹介 トップへ 学園公式サイトへ