二回
夕方の空が、浜のほうまで晴れてた。
雲ひとつなくて、海の上がうすいオレンジ。
外周路の角から、ちょうど見えたの。
きょうは走高跳を10本。
高さは測らない日。
バーを越えるときの、背中がふわってするとこだけ確かめた。
で、晴れてたから。
まこるんに聞こうと思ったの。
浜、いつにする?って。
一回目。食堂の入口で、まこるんの背中が見えた。
声をかけようとしたら、まこるん、紙を持ってて、
すごくちゃんとした顔してたから、やめた。
二回目。夕ごはんの鯖の味噌煮のとき。
まこるんが、リンクの職員さんの返事をリンリンに伝えてて、
リンリンが「頼んでないわよ」って言ってて、
そのあと、なんか言い出せなかった。
二回とも、口は開いたんだよ。
夜、お母さんに手紙を書いた。
最初は、風呂敷のマントのこと。
それから、芋けんぴをわけた人の名前を、一人ずつ書いた。
受け取ったときの顔も、一人ずつ。
書いてたら、みんなの顔がちゃんと思い出せて、
便箋が二枚になっちゃった。
「ありがとう」は、いちばん最後の行に書いた。
最後に書いたら、最後までちゃんと届く気がしたの。
あしたの朝、船に出す。
晴れてるのに聞けないのって、なんでかな?