減り方
「ルナっぴ、きょうは走らないの?」
朝、食堂の前で、七瀬に聞かれた。
「走らない日だ」と言った。
七瀬は「そっか!」と言って、行ってしまった。
それだけだった。
足が、一歩ぶん遅れて動いた。
午後、車庫へ行った。
きのうの測定のあとの、タイヤを見に。
溝の減り方を、指でなぞった。
外側が、少しだけ多い。
振り返しの、立ち上がりのところだ。
きのうの減り方を、先月のと並べてみたかった。
先月のタイヤは、もうない。
通り雨が、車庫の屋根を一度だけ叩いて、やんだ。
部屋に戻った。
椅子の背に、手ぬぐいが掛かっている。
畳んだまま。
火曜に洗って、掛けたときのままだ。
夕凪とは、きょう、すれ違わなかった。
返しに行く理由は、ある。
行かない理由は、まだ分からない。
いつまで、ここに掛けておくつもりなんだろうな?