客席
出口の前には、人は立たないほうがいい。
午前は、走らなかった。
車庫で、あすの測定の前の点検を12項目。
全部、済ませた。
午後、リンクへ行った。
搬入口が開いていて、外の光が四角く入っていた。
照明は、半分。
これで、外のほうが明るい。
七瀬が、フェンスのそばに立とうとしていた。
鳥と、搬入口のあいだだ。
「そこに立つな。出口だ」
七瀬を客席へ連れていった。オレも、その隣に座った。
久遠寺は、入口で、鳥のためだと言っていた。
誰も、ほかの理由は聞いていない。
鳥は、フェンスの上にいた。
出口のほうは、見ていなかった。
しばらくして、久遠寺が滑りはじめた。
通しを、一本。
オレは、フェンスの上を見ていなかった。
久遠寺を見ていた。
半分の明かりでも、久遠寺のエッジは、
氷の上の決まった線を、同じように通っていく。
出口を確かめるやり方が、オレと似ている。
終わりのポーズで、久遠寺の目がフェンスのほうへ動いた。
鳥は、まだそこにいた。
搬入口が閉まった。
夕方、掲示板に紙が増えていた。個人発表会。
夜、四人とも、まだだと言った。オレも、まだだ。
鱈のムニエル。けさの便で届いた鱈だった。