桟橋までの勝負
ごろごろ、って音がずっとしてた。
タイヤを転がす音。
五人で坂を下りていくあいだ、
その音だけがついてくるの。
あたしはタイヤ担当。
車体のほうは背が届かないんだもの。
……身長のせいじゃないから。
これは役割分担っていうのよ。
途中でルナに言ってやった。
「ねえ、あんた。
氷の上ならあたしのほうが速いから。
覚えときなさいよ」
ルナは三秒くらい黙ってから、
「そうか」って言った。
……「そうか」って何よ。
そのあと、口の端がちょっとだけ
動いた気がする。
気のせいかもしれないけど。
なんで急に勝負を申し込んだのか、
自分でもよく分からない。
分からないけど、言わずにいたら
桟橋まで持たない気がしたの。
船に積み終わったら、
みんな急に静かになった。
だからまた何か言おうかと思って、
やめた。
夜は鯖の味噌煮。
あたしはさつま芋を半分だけ。
甘いものは、少しでじゅうぶんなの。