三行目の跡
封筒が三通、机の上にあります。
きょう、書き上げました。
宛名を書いて、
切手の場所を空けて、
のりはまだ付けていません。
次の水曜まで四日ありますから、
急ぐ必要はないのです。
下の妹への一通は、
三行目だけ紙が少し薄いです。
消しゴムを何度もかけたところです。
結局、こう書きました。
——試合の日が決まったら、
いちばんに知らせます。
見に来てくださいとは、
書きませんでした。
でも、知らせますとは書けました。
きのう書けなかったのは「来て」で、
きょう書けたのは「知らせる」です。
半分だけ進んだのだと思います。
読み返したら、そこだけ字が大きくて、
書き直したのが丸わかりでした。
そのままにしておきます。
迷った跡は、たぶん
消さなくていいものです。
夜はドライカレーでした。
野菜スープに浮いていたにんじんが
星の形に切ってあって、
ひとりで気づいて、
ひとりで嬉しくなりました。
机の上の三通と、
まだ閉じていない口。