貝のもの
十一時半に、食堂へ行きました。
お昼が、いつもより早い時間だったからです。
五目ちらしと、はまぐりのお吸い物。
見送り膳です。
食堂の方が、そう教えてくれました。
遠くへ行く人には、
帰ってくるようにと願って
貝のものを出すのだそうです。
貝は、二枚がぴったり合う。
だから、また合わさるように。
ルナちゃんは全部食べていました。
意味を知っていたのかどうかは、
分かりません。
聞きませんでした。
午後は、アリーナでサーブ。
本数は、いつもより多く打ちました。
体を動かしていると、
考えごとが少し後ろに下がります。
夜、また食堂へ行きました。
献立は、お昼と同じでした。
台にお椀が出ていたので、
わたしはそれをテーブルへ
運んでいきました。
一つ。もう一つ。
数えないようにしていたのに、
手のほうが勝手に数えていました。
数字は書きません。
書いてしまうと、その数が
本当のことになる気がして。
はまぐりのお吸い物は、
お昼よりも少しだけ
出汁が濃くなっていました。
煮返したぶんです。
それだけのことです。