二組にしておく
十六時すぎ、打ち込みの合間に、
一度だけ洗い場へ行きました。
水を替えるためです。
……というのは半分ほんとうで、
半分は、見に行っただけです。
桶に、軍手が沈んでいます。
一組は、水曜の夜からです。
指先のところだけ、
まだ形が戻っていません。
繊維が起きてしまうと、
洗っても寝てくれないんです。
毛羽立った先を、
指でそっと撫でてみました。
それだけで、
どう使われたかは分かります。
でも、聞きません。
聞かれたくないから
夜に来たのだと思いますし、
わたしなら聞かれたくありません。
だから、わたしの一組を、
となりに沈めておきました。
二組あれば、
どちらの話でもなくなります。
そういうことにしておきます。
アリーナに戻って、
そこからはよく打てました。
打つときの息が
きょうはまっすぐ吐けました。
主菜は揚げ出し豆腐です。
衣が出汁を吸って、
箸で持ち上げるときに
少しふるえるのが好きです。
何も聞かないでいることは、
わたしにもできることです。