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← 夕凪 千鶴 の日記

数えなかった日

雲がひとつもない空の下で、
アリーナの窓だけが白く光っていました。

中は涼しいままです。

打ち込みを40本。
サーブを54本。

連続で入った数は、
きょうは数えませんでした。

いつもは、数えます。
11本とか、8本とか、
そういう数字を持って帰ります。

きょうは、やめました。

理由は書かないでおこうと思って、
やっぱり少しだけ書きます。

木曜に、掲示の前で
考えていたことがあります。

だれのために打つのか、という話です。

数えるのは、
だれかに見せるためでした。

見せる相手がいない一本を、
数えられるだろうか。

……と思って、数えずに打ってみたら、
ふつうに打てました。

拍子抜けするくらい、ふつうに。

数えなくても、
腕は同じところに振り下りました。

わたしの体は、
たぶん最初から知っていたんです。

きょうの答えではありません。
きょうの、途中の一歩です。

きのうの夜おそくに、
乾いた一組を返しに行きました。

戸を叩くのはやめて、
前にたたんで置いてきました。

もう一組は、まだ干してあります。

夜はスパゲッティでした。

麺をゆでる大鍋の音が
食堂の外まで聞こえていて、
それだけで元気になります。

レタスのスープに
たまごがふわっと散っていて、
きょういちばん好きだったのは、
たぶんあれです。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

連続で入った数

この日と9/17の日記より

打ち込みを40本、サーブを54本。いつもは連続で入った数を持って帰るのに、きょうは数えなかった。数えるのはだれかに見せるためで、見せる相手がいない一本を数えられるだろうか、と木曜に掲示の前で考えていたから。

8本 9/7 11本 9/14 9/19 数えず 続けて入ったサーブ

途中の一歩

この日の日記より

数えずに打ってみたら、拍子抜けするくらいふつうに打てて、腕は同じところに振り下りた。千鶴の体は、たぶん最初から知っていた。それはきょうの答えじゃなく、途中の一歩。

乾いた一組

この日の千鶴と凜の日記より

きのうの夜おそく、乾いた一組を返しに行った。戸を叩くのはやめて、前にたたんで置いてきた。もう一組は、まだ干してある。

凜は朝、戸の前にあったその軍手を、持っていかずに机に置いてきている。

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