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← 夕凪 千鶴 の日記

小鉢の筑前煮

小鉢に、筑前煮。

れんこん、ごぼう、にんじん、
こんにゃく、鶏肉、しいたけ。

夕食に出てきたそれを見て、
箸を持つ前に、
なぜか背すじが伸びました。

祖母もよく作ってくれた料理です。

ひと口めで、
あ、ちがう、と思いました。

祖母のは、もう少し甘くて、
ごぼうがもっと太くて、
しいたけの戻し汁の匂いが、
もっと強くて……

そこまで考えて、
比べるのをやめました。

食堂の筑前煮は、
食堂の筑前煮で、
れんこんがしゃきっとしていて、
ちゃんとおいしかったので。

比べながら食べるのは、
作ってくれた人に
ちょっと失礼な気もしました。

鰆の西京焼きも、
皮までこんがりでした。

食べ終わってから、
郵便の棚の前を通りました。

五枚ぶんの封筒は、きょうもそこに。

あしたの朝、船に乗ります。

封筒さん、あしたは寝坊しないでくださいね。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

比べるのをやめました

この日の日記より

小鉢の筑前煮は祖母もよく作ってくれた料理で、ひと口めで「あ、ちがう」と思った。祖母のはもう少し甘くて、ごぼうがもっと太くて、しいたけの戻し汁の匂いがもっと強い。そこまで考えて比べるのをやめた、比べながら食べるのは作ってくれた人にちょっと失礼な気がしたから。

封筒さん

この日と前日の千鶴の日記から

五枚ぶんの封筒は、郵便の棚にきょうもそのまま。前日は行きに一回、帰りに一回、寝る前にもう一度と厚みをたしかめに通っていた。あしたの朝、船に乗る。

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